ちょうど今から10年前、2013年6月15日。
焼き立てのパンの香りが漂い、時に聞こえてくる鳥のさえずりが心地良い場所。
窓から見える広い裏庭は、まるでドイツで見た秘密の場所のようで…
福井市開発の住宅街。 そんなマンション一階の一室でベルカルテは始まりました。
当時はまだ物件を決めずに、買付と品定めを先に進めていました。
欧州から帰ってきて、不安とは裏腹に続々と届く荷物に囲まれながら、いろんな街を散策する日々。
いつか見た、パン屋と隣り合わせの欧州風景を重ねながらの空想。
たどり着いた場所を遠くから何日も眺めて、1年後、2年後とイメージを作っていたと思います。
ここはもともと事務所として使われていた一室。
奥の扉を開けた時、目の前に広がった裏庭。
この場所に作る、そう決心した瞬間でした。
内装テーマの一つは工場跡地でした。
無気質で何もないところで、ふと温かな物に出会って欲しい。
この場所にいる時が非日常と感じられること。
せわしない毎日の中で、ホッとしてもらえる時間になるようにと。
日々出来上がっていく内外装。
映っているのは若きチエさん。
彼女は私の前職の部下でした。
これは噂を聞いて駆けつけてくれた日でしたね。
もちろんこの時はまだベルカルテのスタッフでは無かったんですよ。
オープン2週間前、準備進行の遅れで焦っていた時。
ここに来ないか?と誘った時でもあります。
店舗内装とは別に、ガレージでは同時進行で家具什器の補修メンテナンスに追われました。
アンティーク家具を積んだトラックが次々と来るんです。
本当に無我夢中でしたねー。
内装がほぼ完成して、いよいよ商品搬入。
流行りに左右されないベーシックなアイテムや、おしゃれに個性や独特の雰囲気をもたらしてくれるアンティークの世界感を。
まだ見ぬいろんなお顔を想像しながら配置していました。
外装のテーマは「森」
小道を抜けた先にある庭先の素敵さ、裏路地で出会った一軒の感動。
それから森でふと見つけた灯りで安堵感を憶える様な場所に。
今暮らす街に小さな森を作ろうと、当時10センチばかりに育ったへデラの苗木をいくつも植えました。
いつの日か、緑で覆われた素敵な場所になってくれたらと。
最初はこんな感じです。かわいい。
内装初期構想図。
開店ギリギリまでの準備作業。
本当にギリギリでしたね笑
作り手と使い手を繋げる場所に。
ギフトという言葉はとてもシンプルですが、そこには相手のことを思いやる 温かい気持ちだったり、自分へのご褒美という特別な想いもあったりします。
大切な場面で、ずっと使っていきたいと思えるもの、使ってきてよかったといつか思ってもらえるものをお届けできたら。
品物が使い手に渡ったその先にある笑顔を想像しながら、 その商品の良さをお伝えしたい。。
そんな思いを抱いた10年前、無事にオープンを迎えることができました。若い。。
ベルカルテとは ” ベルリンの地図 ” という意味の造語。
2013年、ドイツベルリンの街から旅は始まりました。
一枚の地図を眺めながら各方面へのハンティング。
この時に集めた品物が、お店の最初の品物たちです。
2年目、旅のルートを少し増やし始めます。
ドイツを拠点にイギリスへ、そしてフランスへ向かいます。
3年目、手伝いがほしい。。
欧州仕事の多さと、次のステージへの種まきとも考え思い切って休業。
この年の旅からチエさんを同行させて、長期の旅へと出発しました。
4年目、ルートをさらに拡大、オランダ視察。
LCCも駆使して細かく移動、新たな情報を収集。
旅のルートは毎回変えること。
いろんなルートや手段を使って見る角度を変えていきます。
5年目、スタッフトモさんが仲間入りします。
1日でも多くベルカルテの時間をみなさまへと。
6年目、新たなルートにベルギーを加えます。
移動手段に電車も多く使うように。
極寒の過酷な冬の買い付け、チエさんが高熱でダウンした年でもありました。
7年目、車での他国移動が盛んになります。
ベルリンからライプツィヒ、ブリュッセル、アントワープへ北上してそのままパリでリターン。
ブリュッセルでは車上荒らしに遭う被害。
身の引き締めをあらためて考えさせられ、めげずにまた次へのルートへと足を踏み出す。
またひとつ強くしてくれた年でした。
8年目、コロナが世界中で蔓延。
旅のストップが余儀なくされます。
いろんな計画が頓挫して白紙に。
それでもたくさんの方々がお店へ足を運んでくれました。
いろんな気づきを得られるタイミングでもあり、引き出しをひとつ、またひとつと増やす日々に。
種まきに時間をかけて、サクラという花がお店に咲き始めました。
9年目、海外メーカーとのコンタクトも盛んになって、画面上でのやりとりする日々。
それでも国内外いろんな方面で動き続けて、仕上げてもらう品々。
いろんな荷物が世界中から届き始めます。
そして10年目、買い付け旅再開。
また直接話ができる、直接物に触れられる。
買い付けの旅先で心響く特別な品物たち。
欧州を中心に国内外で出会った衣類やアンティークの装飾雑貨。
ベルカルテに新たな商品を繋げられることが本当に嬉しく思います。
旅をしていると起こるいろんな出来事は、良いこともあれば、トラブルもいろいろ。
沢山の事を経て荷物が届いたときは、いつもとても感涙深いものがあります。
ベルカルテのために作っていただく品々、時にこの場所でしか手に入らない唯一無二の品々。
使う方の手にしっかりと渡っていく時間は、なんだか見送るようで嬉しく思うものです。
世界中にある沢山の “ いいもの ” 本当に良いと思えたものを、これからも集め続けていきたい。そう考えています。
10年間。
日々たくさんの方々に支えてもらえて、ひとつの区切りに辿り着きました。
これまでお越しいただいたたくさんのお客様、良い品物を作り続けてくれるメーカーの方々、一緒に進んでくれるスタッフたち。
本当に心から感謝しています。
いつもの日常に、ひとつの足し算で多くの幸せが生まれるように、じっくり物と向き合い、しっかり物と付き合っていくこと。
ふと出会った品物が、生活をより楽しくしてくれるような... そんな出会いができる心地よい空間にしたい。
何気に寄って、この扉を潜った時間が、まるで宝探しのようであったら。
当時目標にしていた節目の年、今は気が付けば次の節目へと色んな計画を立てたりしています。
変わらず続けていくことはもちろん、新たな形を作りながらベルカルテを進めていきたいと思っています。
それからもうお会いした方も多くいると思いますが、新たなスタッフ、yuka と mao が仲間になりました。
11年目、また一歩一歩、より楽しい場所になるように。
これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。
katayama